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C&C ひきこもりオンラインハンドブック 概説記事01
ASD等の「発達障害の診断」に関係する諸論点

C&Cが運営する「ひきこもり家族コンサルティング」の経験から、対応が特に難しいひきこもり事例には、ASD等の発達障害が疑われるケースが多いということが分かっています。そして、そのような場合、医師により実際に診断を受けることが、ひきこもり問題の解決に向けた一歩として極めて重要です。そのような事情から、ひきこもりオンラインハンドブックでもASD等の「発達障害の診断」に関連してさまざまな論点を取り扱ってきました。本概説記事では、その基本的な主張をまとめます。

 

発達障害に関係する支援にとっても最も重要であることは、本人が医師の診断を受けて、発達障害かどうかを判定されていることです。日本では、発達障害であるかどうかの判断は、医師にしか可能ではありません。社会的に通用する客観的な基準としては、本人の自己診断も利用できず、必ず医師による判断が必要になります。

 

医師による診断の価値は、しばしば過小評価されています。本人や家族からはもちろん、診察する医師によってもその価値が低く見積もられているということがありうるのです。それにはいくつかの原因が考えられます。

 

一つには、診断がただのラベル貼りとして受け取られているということがあります。病気を治療するようには障害を治療することはできません。薬による軽減も現段階では限界があることが知られています。そうすると、診断を受けたとしても、医学的な対処は直ぐに底を付いてしまいます。だから、特に本人が、診断を受ける意義を見出せないという場合が多いにあるのです。

 

しかしながら、以上のことが医学的に事実であったとしても、診断の社会的価値はそれにもかかわらず少なくありません。というのも、障害を持っている人は多かれ少なかれ(工夫や支援なしには)典型的な社会生活を送れないのですが、そのことについて本人が責任を負っているかどうかが、支援を受け取ることの可能性に事実上影響するからです。本当は、本人の責任により何か困った事態に陥っているとしても、支援が提供されるべきなのかもしれません。しかし実際には、本人の責任によって生じたことについては支援が提供されにくく、本人の責任によって生じていないことについては支援が提供されやすいという事実があります。したがって、障害の影響によって本人が困っている、つまり、その困りごとは本人の責任ではないということをできるだけ客観的に確定することが、本人に対する支援の提供されやすさに影響するのです。

 

これは資格や学歴が持つ社会的信用力と同様の現象であると思われます。典型的に社会的に評価されやすい事情が存在しなかったとしても、社会の中で上手く生活していくことは可能です。しかし、いちいち実質的なことを証明しなければ他人に対して信用を得られないということは大変であり、評価されやすい資質を予め評価されておくことに価値があります。診断に関しても資格や学歴と同じように社会的価値が存在していると言えます。

 

また、診断の価値は、先に述べたような社会的支援を受けやすくなるといった、主に対社会的なものに限られるものではなく、身近な人間関係においても見出すことができます。診断が認定する本人の特性の知識は、本人と身近な人とのコミュニケーションを改善するための大きなヒントとなるからです。本人と周囲がお互いの特性とその違いを理解し、それに応じた工夫をすることで、双方に生じるコミュニケーションをめぐるストレスを減らしていくことができるのです。

 

本人に対して医師による診断を動機付けるためには、上記の事情を丁寧に説明することが必要になります。特に自閉スペクトラム症(ASD)は責任に関係する障害なので、上記のような「障害の診断」「責任の免除」「支援の受けやすさ」、さらには「コミュニケーションストレスの解消」の連関を正しく理解するためにも支援を受ける必要がある場合があります。このような事情を当然に本人が知っていると思い込まず適切に助言することが、特にご家族の立場から重要になってくると思われます。

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以下は関連する記事へのリンク集です。より詳しく知りたい方はぜひリンク先をご覧ください。

 

ASD当事者には診断を受けることの意味についての包括的全体的な説明をする必要がある

ASDの疑いがあれば幼少期に診断を得ておくべきである三つの理由

ASDとADHDの併発事例の特殊性 それでも為すべきことは問題を診断名に包摂していくことである

発達障害の診断名への事実の包摂の具体的説明

発達障害診断は責任分配を変化させ支援の前提となる

発達障害診断の効用としての「怒り」の減少

障害診断は責任を軽減させる ただその前提は具体的な事象の障害への包摂である

ひきこもり:発達障害診断後の診断名の活用法

両義性と一義性という観点から再考する「ひきこもり当事者にとっての発達障害診断の価値」

発達障害の原因究明と根本解決には発達障害の概念と診断基準の明確化が必要である

家族に発達障害の診断を勧めるうえで必要なステップについて

発達障害の医学的診断以前にバリアフリーを適用するアプローチの有用性

発達障害やASDなど「ラベル(診断名)」は相互理解の促進のためのものである

ADHDの疑いがあるなら、その診断を受けた方が良い理由

ASDの診断はミスコミュニケーションの解決の客観的基盤となる

自閉スペクトラム症(ASD)の診断名を活用し、人間関係のトラブルを回避する方法

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