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ひきこもり家族に一般的な一つの傾向として、ひきこもり本人に対して非常に「優しい」ということがあります。もしかするとひきこもり家族はひきこもり本人に厳しい態度をとっているのが普通だと想像されてきたかもしれません。実際にはそのようなケースは少数です。多くのケースでひきこもり家族はひきこもり本人と没交渉の状態で落ち着いています。そういった場合にありがちな問題として、ひきこもり家族がひきこもり本人の主観に振り回されてしまうというものがあります。この記事ではひきこもり本人の主観にどのように向き合うべきなのか考察していきたいと思います。
世間一般には、ひきこもりに対する厳しい視線が存在すると想定されます。働けるのに働いていない(と思われがちな)人の存在は、働いている人にとっては疎ましく感じられるのかもしれません。ひきこもりに対するその種の不満を持っている人は(間接的に)ひきこもり家族のプレッシャーをかけています。そのプレッシャーは、ひきこもり本人にひきこもり家族が就労するように強く求めるべきである、ひきこもり本人をひきこもり家族が「甘やかしてはならない」といった内容のものになっています。
しかし、ひきこもりご家族の多くも、そのような世間一般のプレッシャーを本人にそのままぶつけることがあまり有意義でないということは理解されています。というのも、ひきこもることには相応の事情があり、ひきこもりの背景を無視して画一的な要求を押し付けることは、決して問題の解決にはならないからです。しかしながら、そこでひきこもり家族の多くが代わりに実践されていることは、それはそれで問題がないわけではありません。ひきこもり家族の多くは、ひきこもり本人の主観をそのまま客観であるかのように受け取ってしまいます。つまり、ひきこもりに対して社会的な意見をぶつけたりはしない一方で、ひきこもり本人の意見に密着しすぎてしまうのです。
これは、ひきこもり本人が自分自身の状況について十分な理解を持っていれば合理的です。もし状況が「自分のことは自分が一番よく分かっている」といった定型句どおりのものならば、確かに本人の言う通りにするのが良いでしょう。しかし常にそのようなルールで上手くいく訳にはいきません。未成年には保護者の監督が必要ですし、認知症患者にも本人の理解範囲にとどまらない配慮を支援者が提供する必要があります。確かにひきこもり本人は大抵成人していますし、認識能力に低下が見られる訳ではありません。しかしひきこもり本人が自分自身の心理的・社会的状況を完全に理解できている訳ではありません。そのような状況では、ひきこもり本人の主観が、心理的・社会的状況という客観を反映していない、という部分があります。そういった部分に関して、周囲の人が本人を尊重するつもりで本人の主観面に合わせていると、どんどん客観からずれた対応になりがちです。客観からずれた対応をしていると、まぐれ当たりがないかぎり的外れな対応になる訳ですから、状況は次第に悪化していきます。
ではどうすれば良いのか? 問題は本人の状況を本人の主観から切り離して客観的に捉えることでした。家族のメンバーでない人に客観的なコメントを求めるということで上手くいく場合もあります。家族のメンバーは状況に巻き込まれているために、冷静で常識的な対応が既に困難になっている場合が多いからです。例えばご友人であれば、冷静さを欠くことなく常識的なアドバイスをくれるでしょう。しかし最良の対応は、客観的な助言を相談機関に求めるということだと思われます。というのも、家族のメンバー以外の普通の社会人にアドバイスを求めてしまうと、社会的な意見つまり社会の主観をぶつけられてしまう恐れがない訳ではないからです(それに秘密保持の問題もあります)。それでは最初に紹介したような(ひきこもりに対する)無理解に戻ってしまいます。専門的な能力を持った相談機関であれば、社会的・主観的コメントではなく合理的・客観的な判断を提供してくれる可能性が高まります。ただし、その際にも相談機関の見解の客観性に注意するということが重要です。ひきこもり相談機関といっても、主観的なアドバイスを提供することにとどまっている機関も多いからです。家族のメンバーや友人とは違う、専門的なレベルで客観的に判断してくれる機関かどうか、そういった視点で相談機関を査定されることをお勧め致します。
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