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ライフラインとライフスタイルの区別については他の記事でも解説していますが、改めてこの区別の有用性について解説したいと思います。一般的なひきこもり相談があまり成果をあげることができない原因の一つは、ライフラインとライフスタイルを区別できていないことであると思われます。ひきこもり相談でこの区別を維持すべき理由は、主に次の二つの観点から説明できです。
第一に、ライフラインとライフスタイルを区別することによって、ライフラインの問題に集中することができるという観点があります。ひきこもり状態からの脱出を考える場合に、話が進まなくなるのは、ライフラインだけでなくライフスタイルの問題まで同時に解決しようとしているからです。ライフスタイルに関しては、支援者と被支援者が明確に一致できる既定の内容がありません。例えば、どのような就労形態で働くのかはライフスタイルの問題であって、被支援者の積極的な関与が無ければ、一つに決めることはできません。他方で、ライフラインの問題に関してはある程度まで内容が客観的に一意に定まるので、被支援者の積極的な努力が無くても、支援者が内容を準備してから被支援者の同意を得るということが可能です。よってライフラインの問題に集中することによって、現実的な期間のうちに問題を解決することができます。
第二に、ライフラインとライフスタイルでは、そもそも第三者が関与できる余地が異なるという観点があります。ライフラインに関しては、そもそも個人的な選択の余地があまりなく、理論的には本人の事前の同意を必要とせず第三者が関与することも許容されていると思われます。他方で、ライフスタイルに関しては、第三者は特定のライフスタイルを推奨することしかできません。この違いは日本社会の基本的な構造なので個人レベルでどうにかできることではありません。他人のライフスタイルには基本的に干渉できない社会に我々は住んでおり、そのことを誰もが受け入れる必要があります。
この第二の観点もやはり生活保護との関係で重要です。積極的に就労しようとせずに生活保護に頼って生きていくということは、一つのライフスタイルとして世の中で推奨されることがあります。確かにそのようなライフスタイルは多くの人にとって好ましくないものと見なされるかもしれませんが、現代日本でそのようなライフスタイルは制度的に可能であると思われます。その場合、第三者は、そのようなライフスタイルを採用すべきではないという働きかけしか許されていないと思われます。ところが生活保護はまさにライフラインの問題なので、生活保護をライフスタイルとして捉えた上でそれに対して否定的に振る舞うことは、ライフラインの問題解決としての生活保護受給を妨げるという意味で大いに問題がある行為です。ライフラインの問題とライフスタイルの問題を区別しないと、より重要な前者の問題を解決することが妨害されてしまう恐れがあるということです。
このようにライフラインとライフスタイルは、特に生活保護との関連で、的確に区別されることを必要としています。実際に生活保護を受給していれば悲惨な結末(自殺や犯罪など)に到達しなかったであろうケースが現実に存在していると思われることからすれば、このような区別を有効化していくことは社会的に喫緊の課題であると思われます。
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