ひきこもりオンラインハンドブック
ASDが「論理的である」ということの意味を明確化する　この人は発言に一貫性がないからASDではないという誤解を避けるために

自閉スペクトラム症（以下ASD）の特徴を解説する場合に、説明を理解していただくことが難しいポイントがいくつかあります。その一つは、ASDの人が論理的であり整合性に気を配るというところです。家族のメンバーについてその人がASDかどうか疑っているとき、その人物が論理的に見えない／一貫していない／支離滅裂であるという感想を持っていると、その人物がASDではないと判断してしまうことがあります。もちろんASDであるかどうかは精神科医の診断によって初めて確定するものですが、家族が家族の一員についてASDでないと思い込んでしまうと、精神科の受診にまでつながりません。そこでこの記事ではASDの特徴付けと現実のASDの人の振る舞いの落差に関する不思議について解説します。

他の記事でも解説していますが、人間の追求している整合性について、大雑把に二つに分けて話を整理していくと分かりやすいと思われます。それは大域的整合性と局所的整合性です。大域的整合性というのは、それが何であるかを正確に描写することが難しいのですが、世間一般で「筋が通っている」と言われるような複数の出来事や行為のまとまり感のことを言います。他方で、局所的整合性は、論理的整合性と同一視してしまっても宜しいでしょう。これは論理学やその他の学問が対象にするような整合性であり、究極的には客観的に明確にできるものと思われます。

定型発達（以下定型）の人は、普通、前者の大域的整合性を気にしています。大域的整合性が欠けている話は、受け入れがたいものとして却下しています。逆に、定型の人にとって局所的整合性は教育や訓練によって身につけるものであり、ほとんどの人は局所的整合性が欠けていることに対してかなり寛容です。日常的には局所的整合性をチェックすることはありません。他方で、ASDの人は局所的整合性だけに関心を向けます。ASDの人は大域的整合性には相対的に拘りません。

このような定型とASDとの間の違いが、コミュニケーションギャップを作り出します。定型の人からASDの人を見て支離滅裂に見えるのは、ASDの人が大域的整合性に配慮せずに局所的整合性を追求しているからです。その場合に定型の人が採るべき対応方法については他の記事に譲ります。重要なのは、ASDの人について整合性が高いと言う場合に意味されているのは、局所的整合性のことであるということを覚えておくことです。ある人物がASDであるかが問題になっている場合に、その人物が大域的整合性よりもむしろ局所的整合性に関心を持ち、結果として大域的に整合的でなくなっているということは、その人物がASDではないという判断に傾く事由ではありません。

以上をまとめると、どちらの整合性を問題にしているのかに応じて話が変わってきてしまう、ということになります。定型の人は大域的整合性に強い関心があり局所的整合性に弱い関心がある。ASDの人は大域的整合性に弱い関心があり局所的整合性に強い関心がある。この区別に注意しておきましょう。

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