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自閉スペクトラム症(以下ASD)の人の困りごとの一つに、細かいことが気になってしまって、全体として何らかの作業が進まないということがあります。例えば誤字脱字が気になってしまってプレゼンの進捗が滞ってしまうといった場合などです。また、起きる可能性が低いことが気になってしまって適切な行動がとれないということもあります(これらの傾向性は、程度の差こそあれ完璧主義的な人々一般に観察できることでもあります)。この記事では、完璧主義的傾向のあるASDの人に向けて一つのライフハックを解説したいと思います。
完璧主義的な人に対して、そうでない人が向けるアドバイスはどんなものでしょうか。例えばそれは「細かいことは気にするな」や「その点は捨てるべきである」といったものではないでしょうか。こういったアドバイスで状況が改善すれば結構ですが、あまり効果が上がらないということが予想できます。というのも、まさにそのようなアドバイスを自分で自分に言い聞かせても上手く行かない人が、完璧主義的な傾向を見せるからです! おまじない程度のアドバイスで問題を解決できるなら、既に本人が問題を解決しているでしょう。完璧主義というのは、細かいことを気にしたり、細部を捨てるに捨てられないという点で特徴付けられるような特質であると言えるでしょう。そうした人に「細部を気にするな」と言うのは、風邪を引いて苦しんでいる人に「風邪を治すといいよ」と言うようなものです。したがって、より工夫のあるアドバイスが必要とされている訳です。何を工夫すれば良いでしょうか?
完璧主義的な人は、全てを考察し全てに適切な準備を整えることを望んでいます。もし時間が無限にあれば、そういった方法が最も適切なやり方であるでしょう。しかしながら実際には締め切りというものが存在するため、このやり方は成功しません。なぜ成功しないのでしょうか? 完璧主義が成功しないケースには、次のようなパターンがあるでしょう。あともう少しだけ時間があれば良くなったにもかかわらず、期限が来てしまったので成果のために必要不可欠な部分が実行されず、結果として他の(完璧を期さない)やり方をするよりも上手くいかなかったということです。つまり、成果を生むために必要不可欠な作業が締め切り後になってしまうような計画を立てていたか、計画自体は無理のないものであっても(細かい点に時間を使いすぎて)計画通りに行かなかったということが失敗の原因です。
そうだとすれば、完璧主義を維持しつつ、つまり何ものも切り捨てずに成果を上げる方法があります。単純に成果のために必要不可欠な部分を計画の最初の方に持ってくるということです。すなわち、成果に結び付く重要なものから取り組むように毎回注意するということです。毎回注意するというのは、計画の進行に応じて計画を変更できるタイミングでは毎回、残っている課題の中で優先順位の高いものに取り組むということです。これは何を捨てるのかではなく、何に先に取り組むのかという問題設定で作業するということです。このように優先順位を設定しさえすれば、時間切れで完璧主義が失敗するということもありません。つまり計画が全て完了しなくても、スケジュールがずれ込んでしまっても、時間切れによって実行されない部分は計画のより重要でない部分に過ぎません。より重要で不可欠な部分は先に実行されてしまっていますから、間に合わないということが無いのです。したがってこれは「失敗」ではないということになります。
このようなアドバイスは、完璧主義者以外の人には当然のことに思われるか、あるいは何を解決しているのか分かりにくいかもしれません。特に疑問に思われるかもしれないのは、結局のところ全部を実行できないという想定に立つのであれば完璧主義の人にとっては等しく受け入れがたいではないのか、という点です。そうではありません。完璧主義の弱点は時間の流れの中で、利用できる時間の量と作業にかかる時間の量についての計算が難しくなっている点にあります。もし時間が足りないということが明確であれば、計画に含める課題を減らしてクオリティを下げる(または課題全体を拒否する)ということに、完璧主義の人は困難を感じません。受け入れがたいのは見通しが立たずにいることで、捨てる必要があるか分からないところで捨てるということなのです。
重要なことに先に取り組むというルールは、捨てるという心理的な決断を必要としていないため、完璧主義の人にとって負担感がありません。他方でこのルールは、課題の一部を捨てるという実質(完璧主義と両立しないと思われた実質)をもたらすことができるため、完璧主義者にとって大きなメリットがあります。完璧主義者自身が捨てるに捨てられないことを、タイムリミットが勝手に切り上げてくれるのです。完璧主義者または完璧主義的な傾向のあるASDの方には、優先度の高いものを時間的に先に/優先度の低いものを時間的に後に、というルールを採用してみることをお勧め致します。
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「自閉スペクトラム症の人は共感が苦手だ」と紹介されることがよくあります。しかし自閉スペクトラム症の共感能力というポイントについては、普通思われているよりも注意深く理解する必要があります。
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