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ひきこもり問題で重要な区別として、保護と支援を分けるということを他の記事でも申し上げてきました。しかし、この区別を受け入れていただいた場合でも、必ずしも適切に運用していただけているとは限りません。例えば、「(支援だけで)保護しないというのは他人を突き放してしまうことではないのか」と懸念される方がいらっしゃいます。そこでこの記事ではそういった誤解について解説したいと思います。
まず言葉として「支援」ということは他人を支え援けることです。したがって支援が突き放すことでないのは当然です。保護ではなく支援であるという場合に、変化があるのは、双方の当事者の関係性であって、助ける側が助けられる側に働きかける内容が異なるということではありません。
では当事者相互の関係性はどのように変化するのでしょうか? 保護の場合は普通、保護されることに対する相手の同意を必要としません。そのような関係性が正当化される状況は、主に相手方が同意する能力を失っているとか、未発達であるとかいった状況です。例えば相手が意識を失っているときに、救助への同意をその場で求めることはできません。こういった状況では一方的に相手方の身の安全を考えて行動することが一般に求められていると言えるでしょう。逆にそういった状況が無い状況では、他人を保護することに乗り出すことは、良識に反してしまいます。相手は手助けを必要としていないかもしれず、そういった行為は相手方の自由の侵害になってしまうからです。
他方で、支援の場合は必ず相手方の同意を必要とします。具体的には、支援する前に支援を受けるかどうか、支援の内容や方法をどうするかといったことについて、確認を取る必要があります。そうでなければ、相手方の同意する自由を確保することができないからです。支援は当事者の合意に基づいている訳ですから、内容が良識に反しない限り、自由に認められると言って良いでしょう。
このように主体の関係性についてスタンスの違いがあるとしても、実際の関わり方の中身は保護と支援との間で特に差が生じるということはありません。支援は決して、保護の手抜きや保護の放棄ではないのです。相手方の同意の自由を前提するかどうかという重要な違いを精確に押さえつつ、必要な助けを相手方に提供していくということが大切です。
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