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引きこもり問題においてシビアな局面の一つは、引きこもり本人が親に責任を追及してくるところです。引きこもり問題において当事者とその親の関係が悪化していくということは容易に想像可能ですが、そういった場合に親の側でどのように振る舞うべきなのかは、あまり明らかではありません。この記事では親がどのように振る舞うべきなのかを論じます。
まず、どのようなプロセスで引きこもり本人による親の責任追及が始まるのかを確認しておきましょう。引きこもり本人と親の関係は必ずしも最初から悪化しているとは限りません。特に20代前半までの引きこもりは、親と特に摩擦を引き起こしていない場合が多いです。これは引きこもりの年数がまだ少ないため、引きこもり本人があまり引きこもり状態について深刻に捉えておらず、むしろ目先の心踊る社会的活動がないために、引きこもりという選択を当然視しているという側面があります。
しかしながら、月日が経つについて本人と家族の焦りは増していきます。同世代の社会的な活躍も目につくようになりますし、本人が取り組むことができると想像できる社会的活動の幅も少なくなっていきます(本当に少なくなっているのかは別問題です)。本人や家族が引きこもり事態について焦りを感じると、犯人探しが始まります。そういった犯人探しの中で親がターゲットになることが多くなります。なぜならば引きこもり本人と親が同居している場合が多いですし、引きこもりの本人の人生に多大な影響を親が与えてきている(と引きこもりが想定しやすい)場合が多いからです。
引きこもりによる親の責任追及は、様々な形態の主張によることが考えられます。例えば親の育て方が悪いので子供の自分の性格が歪んでしまってそのせいで引きこもりになってしまっているという主張や、決定的なポイントで親が協力しないか妨害したために自分が適切なキャリアを積めなくなってしまったという主張です。こういった主張に対して親はどのように応答すべきでしょうか? 当然のことながら、引きこもり本人の戯言として真面目に取り合わないということが最低の対応と言えます。本人と真面目に向き合わないことは引きこもり本人との関係を悪化させ、破局的結末の危険を増加させます。
もちろんこの記事を読んでいる方は何とかして引きこもり本人に応答しようとされていると思います。そういった場合にむしろ注意すべきことは、引きこもり本人が述べていることを何でも受け入れて同調するということは適切ではないということです。引きこもり本人が主張していることの中には事実誤認やバランスを欠いた評価がたぶんに含まれています。そういった主張でも受け入れた方が本人の機嫌は良くなるかもしれません。しかしながら、客観的に見て成り立たない主張を親が受け入れても、第三者は受け入れてくれません。引きこもり本人の主張に対してただでさえ冷淡な第三者は、少しでも客観的に奇妙なところがあると、引きこもりの主張を却下してしまいます。問題は同じことが第三者の親に対する態度にも言えるということです。親が引きこもり本人の主張を何でも受け入れていると、客観的に適切でない部分に関しては、第三者の理解や協力が得られません。そうすると親は独力で引きこもり本人とやり取りしていかなければならないことになります。これが引きこもり当事者(家族含めて)の社会的孤立の背景をなしています。
では、引きこもり本人の親はどうすべきか? 引きこもり本人が主張していることの中には誤っている部分もあると述べました。したがって、ひきこもり本人の主張のそういった誤った部分を上手く区別して本人を諭していくことが理想的態度であると言えます。しかし現実には、専門家でない方が引きこもり本人の話の誤っている箇所を正確に見抜いて上手く整理していくことは難しいと言えます。引きこもり本人は大抵論理的に洗練されていて、他方で人に説明することには長けていないからです。そこで専門家へ相談することをぜひご検討いただきたいと思います。
専門家に頼らずに引きこもりご家族の方ができることで言えば、とにかく引きこもり本人の考えについて引きこもり本人に質問することです。ほとんどの引きこもりは、質問されることまたは質問に答えることについて、否定的な反応ないし評価をしません。質問すると意外なほどコミュニケーションが上手くいくことに気付かれるでしょう。本人に質問したこととその応答を記録しておけば、後で専門家に相談する場合にも資料にすることができて一石二鳥です。いきなり専門家に相談することに抵抗感がある場合は、質問と記録から新しい取り組みを始めてみることをお勧めします。
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