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ひきこもり問題において、運良く本人が医師の診断を受けることができることがあります。その診断において発達障害であるとの診断が出たとしましょう。その上で問題を解決していくには、どのようにすれば良いのでしょうか? 診断した医師から詳しいインストラクションを受け取ることができれば、それに従うべきですが、自分で考えていくためには何がポイントになるのでしょうか?
一つには、本人や家族が経験した過去の具体的なエピソードを診断名に結び付けるということがあります。もちろん、発達障害の具体的内容を知らなければ、過去のどのようなエピソードが発達障害に起因する事実であるのかを知ることはできません。発達障害の具体的内容を知るためには、専門家や書籍やインターネットに頼る他ないですが、例えばDSM-Vに載っている「診断基準」は、その目的で活用できるでしょう。この「診断基準」には症状が多少具体的に記載されています。ポイントは、過去の具体的な事実をなるべく多く、「診断基準」のどれかの項目と一つひとつ具体的に関連付けていくことです。できれば紙に書き出してみてもいいかもしれません。
このような診断名への事実の包摂で注意すべきなのは、このような作業を行って事態を理解することには多少時間がかかるということです。特に関わってくる家族の人数が多くなれば多くなるほど、このような包摂を全員が心理的に行えるようになるためには時間がかかります。診断名に事実を包摂していく必要があるのは、責任の所在について客観的に合理的な認識を関係者で共有するためです。関係者が発達障害に起因する事象を、そういう原因を持つものとして理解するまでは、関係者が責任の所在について客観的に合理的でない認識を示すことを止めようとしません。
事情は政治家の失言におけるそれと似ています。我々は政治家の言動から本人の認識を推測しています。客観的に合理的でない言動(例えば差別的発言)から、本人の差別意図を公衆が推測し、それが政治問題になります。同じように、関係者が責任の所在について従来の言説パターンを引きずっている場合は、その関係者がいまだに責任の所在について客観的に合理的でない認識を持っているものと見なさなければなりません。そしてそのような認識を是正するように要求することが、政治の場合と同じように課題になってくると考えるべきです。なぜなら認識が一致していなければ、一緒に行動することはできないからです。
しばしば具体的なエピソードを診断基準に包摂していく過程には非常に時間と労力がかかります。ほとんど個人の世界観を変更することに等しい変化をもたらすからです。それでも包摂の努力を避けるべきではありません。このような努力を続けていると、どうしても包摂ができない事情が見えてくることがあります。そういった事情には別の問題が隠れていると見るべきです。別の問題というのは、別の発達障害の場合もありますし、他の病気その他の傾向性である場合もあります。こういった新たな課題を発掘できるのも、一つ目の課題に真剣に取り組むから可能になることなのであって、最初の課題に取り組まないで多くの問題を解決していくことはできません。診断名への事実の包摂は、その観点で非常に重要なものになっています。
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