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 ひきこもりオンラインハンドブック
ひきこもり問題に手遅れはない理由 親が変化し、問題を深く理解することで道は必ず開かれる

ひきこもり問題の解決は
不可能ではない――家族を通じた働きかけが可能性を開きます

 

ひきこもり支援は一般に解決不能な問題であると思われています。現にひきこもられている方のご家族だけでなく、これから家族がひきこもるのではないかという恐れを抱いていらっしゃる方も、当相談室を訪問されています。後者はいわば予防的にひきこもり問題に取り込もうとされている訳です。そのように予防に取り組まれるのも「ひきもりになってしまったらおしまいだ」といった思いに駆られてのことだと思われます。できるだけ早い段階での来所をお勧めしておりますが、どんな段階のひきこもりでも問題解決が不可能ということはありません。ではなぜひきこもり問題は解決不能と思われているのでしょうか?

 

一つには、ひきこもり支援のために必要なステップが、ひきこもり本人の外出を前提としている場合があるということがあります。例えば、発達障害の有無を知りたいと本人や家族が思ったとしても、精神科に本人自身が赴くことができなければ、基本的には医師の診断を受けることはできません。しかしながら、ひきこもり状態が悪化すると、そもそも精神科を受診しにいくことが難しくなる場合があります。そうすると、たとえ発達障害が原因でひきこもり状態に陥っていたとしても、医師も家族も本人も状況を改善することができないということになってしまいます。そのような行き詰まりは確かに存在します。

 

他方で、ひきこもり支援の内容もひきこもり本人の悩みに焦点が合っていないということもあります。国のひきこもり支援は、就労を目標としたものになりがちです。ひきこもり本人に合った就労を支援すればそれでひきこもり問題が解決するのでしょうか? しかしそもそもひきこもり本人は単なる失業者なのではありません! ひきこもりの方が働きたくないと言っていても、それは実は特定の働き方(他人との密接なコミュニケーションが必要とされる働き方)で働きたくないという事情であることが多いです。しかしながら、ひきこもり状態にある人は、自分でもそうした理由を自覚する機会に恵まれず、そもそも働くこと全般が嫌になってしまっている訳です。そのような状態を把握せずに就労だけを支援するのでは、問題の所在を見損なっていると言われてしまうでしょう。

 

これらの事情により、ひきこもり問題は解決不能と思われてきたものと考えられます。ですがひきこもり問題は本当に手の施しようがない問題なのでしょうか。当相談室はそのようには考えておりません。

 

第一に本人の参加が必要なステップで行き詰まってしまうという問題に対しては、次のように考えます。まずはご家族だけで相談のために来所されることによって、ご家族とご本人との間の関係を変えていくことができます。しばしばひきこもり状態は、ひきこもり本人の個人的な問題であり、ひきこもり本人の環境の問題ではないと考えられがちです。しかしながらこれは間違いです。ひきこもりが社会的な事象である以上、必ず社会との関係で、もっと言えば(社会の一種としての)家族との関係で、問題が分析されるべきです。家族もまた小さな社会であるからには、「社会とご本人との間の問題」は何よりもまず「ご家族とご本人との間の問題」ですから、まずはご家族が来談されることが解決への一歩であると考えています。

 

第二の問題は、ひきこもり支援が就労に偏っていて、その手前に存在する問題を無視してしまっているということでした。既に言及した通り、無視されているのは、働くことが嫌になってしまっている対人関係に関する心理的問題です。確かに最終的には、それぞれの仕事に伴うコミュニケーションがどのようなものかに応じて、本人に相応しい就労先を決めるといった支援に落ち着いていくのかもしれません。しかしその前にご本人と支援者としてのご家族がご本人の問題がコミュニケーションの問題であると完全に理解することが必要になります。当相談室では具体的な就労計画などの前に、まずご本人とご家族がひきこもりの状態像とコミュニケーションの問題に関して完全な理解に達することをお勧めしております。そのためにもまずご家族に来所していただき、ご家族を通じてご本人の自己理解をより正確なものにしていくという働きかけが重要になります。

 

こうしてみると、ひきこもり問題は決して不可能ではありません。ただしご本人とご家族の両方が解決不能だと思い込んでしまうと、本当に状況が膠着してしまいます。「今の過ごし方で本当に良いだろうか?」――そのように不安を感じていらっしゃる方、現状を少しでも改善したいと思われた方は、ぜひ当相談室への相談をご検討ください。

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