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「なぜ働かなければならないのか」というひきこもり当事者の議論に自尊感情という観点から応答する

ひきこもり問題でひきこもり本人が主張することには、なぜ働かなければならないのかが分からないという主張がしばしば含まれています。このような主張は、親が(少なくとも短期的には)本人を扶養可能であり、本人が働く経済的必要性がないという事情を背景としているものです。もちろんこのような背景の不安定性などを問題視することもできますが、この記事では見落とされがちな他の論点について解説します。

 

それはひきこもり問題における自尊感情という論点です。ここで自尊感情とは自分自身を尊敬する感情のことです。ひきこもり状態が続き(家事も含む)仕事という形で社会に貢献していないと、多くのケースで自尊感情が低下することが予測できます。そもそも人はある程度の自尊感情を必要としていると考えるべきです。人が必要としているのは食事だけではありません。感情的に安定した生活を送れることは、普通の人の生活にとって食事と同じくらい不可欠なものです。ひきこもっていても問題がないかどうかを考える際には、経済的安定だけでなく感情的安定も考慮に入れなければなりません。

 

しかしそもそもひきこもっているとなぜ自尊感情が低下してしまうのでしょうか? それはそもそも我々の尊敬が典型的には仕事を分担している共同者に対して向けられていることに由来すると思われます。社会の構成員はある程度お互いに(衣食住などの)関心を共有しており、その関心を満足させるための仕事をお互いに分担しています。ひきこもりに対する感情的な反感の根源は、社会の構成員が果たしている仕事の分担を引き受けていないという事実に向けられていると思われます。問題なのは、ひきこもり本人もまた(ひきこもりでない人と同じく)ひきこもりである自分自身への反感を持ちやすいということです。それがひきこもり本人の自尊感情の低下という現象に他なりません。

 

ひきこもり問題に関して家族や第三者が助言する場合に、感情的な地平についてまで実質的にアドバイスできることは稀です。大抵は経済的な問題の話に終始してしまい、逆にひきこもり本人の「お金が無くなったら死ぬしかない」といったエスカレーションを招いてしまいます。ひきこもり問題を実質的に解決しようとする場合には、感情的な事柄についても(本人の主観ばかりに頼らず)客観的に分析していく必要があると言えます。

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