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ひきこもり問題の解決を「(経済的)自立」と捉えることが間違っている理由

ひきこもり問題において圧倒的に多い問題設定は「どのようにひきこもり本人を自立させるか」というものです。このような問題設定は大多数の人々にとって非常に自然に感じられ、そのためにこの問題設定自体が問い直されることは多くありません。しかしながら、このような問題設定はひきこもり問題の解決のために適切な問題設定とは言えません。以下では問題点を解説します。

 

まず「自立」概念が曖昧であるということです。ひきこもり本人も成人していれば、市民社会の一員として親から独立しています。ひきこもり本人は法的には親から自立しており、何ら親からの監督を受ける立場にはないと思われます。確かにひきこもり本人は経済的に親に依存しており、法的な自立よりも経済的な自立を中心に置くのが一般的な観点というものかもしれません。その限りでは、ひきこもり状態のことを経済的に自立していない状態として記述し、さらに「経済的」という形容を省くことも理解できなくはありません。しかしながら、仮に経済的依存のために法的独立性が減少すると考えるのであれば、それは全く不適切であることは明らかです。経済的自立だけを自立と呼ぶことによって、そのような考えが誘発される危険があります。したがって経済的自立という意味で自立という言葉を使うべきではありませんし、さらにこの言葉自体が持つ多義性を考えると、自立という言葉自体を避ける方が無難です。

 

また、ひきこもり問題において目指されているのは、親からの経済的独立であると思われますが、それを経済的自立という仕方で目指すことには問題があります。なぜならひきこもりの中には経済的自立が実際に困難である人もいるからです。すると、親からの経済的独立は不可能であり、親が子供を扶養し続けなければならないのでしょうか? そうではありません。日本では憲法により国民に生存権が保障されており、国は国民の生存を確保することに責任があります。具体的には生活保護の制度があります。経済的自立が困難な人も、生活保護を受給することができます。ひきこもりの中には、生活保護を受給する必要がある方もいらっしゃいます。

 

こういった生活形態への移行であっても親からの経済的独立は果たされているので、ひきこもり問題の解決と言えます。自立という問題設定をしてしまうと、生活保護の受給といった仕方での問題解決の道が最初から排除されてしまいます。もしかすると、このような親から国への支援者の移行は、本人が他者に経済的に依存しているという点を変更しないから、問題の解決ではないと思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかしながら、それは単純に二つの問題の混同であると言えます。つまり我々が経済的に自立していない社会のメンバーをどのように支援するのかという問題があり、それは憲法によって政治的に決着しています。他方で家族がひきこもりを扶養することによって生じる様々なコミュニケーション的感情的問題があります。ひきこもりに固有の問題はむしろ後者なのです。親から国へ支援者が移行することにより、後者の問題を解決することができるということです。ただ「自立」という問題設定では二つの問題が一緒にされてしまい効果的な解決ができなくなってしまうということなのです。

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