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ひきこもり状態で起きる良くないことの一つとして、将来についての(しばしば悲観的な)見通しを立ててしまって、もう何もすることが無いという気分になるという現象があります。ひきこもり本人や家族がひきこもり本人の人生に生じるだろう様々な出来事を予見したつもりになって、「人生終わった」という感想を抱いてしまうということです。この記事ではひきこもり本人が持つ将来への見通しとその見通しに感じられている退屈さについて解説します。
自分の将来が見えた気がして悲しい気持ちになるということは、ひきこもりに限ったことではありません。例えば、キャリアパスが安定している組織に就職している人物は、社会的に羨望されるキャリアであったとしても、自分の人生の見通しに退屈してしまうことがあります。このような心理的状態はどうして生じるのでしょうか? ここで顕著なのは、ライフテンプレート(ある決まった型どおりの類型化された人生)を選ぶという仕方で人生を捉えているということです。そして問題は、既存のライフテンプレートに沿うように人生を選ぼうとすると、選んだ時点でもう先々の人生を生きてしまったように感じられるという点です。
そうなるのも当然です! 結局のところ人生はライフテンプレートではありません。人生には無限の多様性があり、人生の中で生じる出来事は実際には常に我々の予見を超えています。したがって人生をライフプレートによって捉えるのは、テンプレートに乗らないような人生の細部を無視することとイコールです。テンプレートによって人生を捉えようとする人が退屈してしまうのは、現実を単純化していることに原因があると思われます。しかし他方で、普通の人は簡単に退屈さから癒されます。実際に人生を送っていると自分の予見はしばしば裏切られる訳であり、そのことによって人生がテンプレートを超えたものであることを実感することができるからです。
ひきこもり状態にある人にとっても、人生をライフテンプレートの観点から捉えようとしていう点では、社会的に成功している人の一部と似たような問題があります。ひきこもり本人や家族が何らかのライフテンプレートを追求したいができないと思っているという場合もありますし、そもそもライフテンプレートに乗りたくないという場合もあります。
前者の場合は、そもそもライフテンプレートに乗るという捉え方が人生を退屈にする無価値な捉え方であるということを理解する必要があります。確かに多くの人々がライフテンプレートによって人生を理解していますが、実際に彼らが体験しているのはライフテンプレートではない人生の型通りではない豊かさなのです。自分で実際にライフテンプレートに沿おうとしてみれば、そのことに気付くものですが、ひきこもりの状態で他人の人生を外から見ているとその点の理解に到達できないという問題があります。
後者の場合は、ライフテンプレートに乗ることの問題性に注意ができているということは喜ばしいことですが、ひきこもり状態もまた一つのライフテンプレートになってしまいうるという点に注意すべきであると思われます。つまり、ひきこもり状態も一つのパターンに過ぎないとかもしれないということです。他のライフテンプレートと同じように、ひきこもり状態にも本当は各人各様の無限の細部があるはずです。それを一つ一つ注意深く調べていくことで、より一般的なタイプのライフテンプレートを相手にする場合とは異なる形ではあるものの、自分自身のライフテンプレート的な人生観から脱却することができるようになると思われます。
ひきこもり状態は確かに問題があるのですが、それはより一般的なライフスタイルに無理やり切り替えるという形で解消されるべきものではありません。簡単に理解したつもりになることなく、ひきこもり状態それ自体を慎重に観察して考察することが必要であると思われます。
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