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ASDである家族をルームシェア相手と考えてみる(自閉スペクトラム症の人と定型発達の人との付き合い方⑭

家族をルームメイトと考えることは、冷淡などころか相手の望んでいる
距離感である可能性があります

自閉スペクトラム症(以下ASD)の人と定型発達(以下定型)の人との間の摩擦が家庭内で起こっている場合、定型の側の心持ち一つで関係性をより良くすることができる場合があります。それは定型の人がASDの人とルームシェアリングしているつもりになって暮らしてみるということです。この記事ではASDの人と付き合うために定型の人が実践できる一つの暮らし方について解説します。

 

定型の人がASDの人とルームシェアしているかのように暮らすとは、どういうことでしょうか? 常識的に言えば、家族と一緒に暮らすことと、知人とルームシェアリングすることでは、暮らし方が異なります。定型の人にとっては、ルームシェアすることの方が気も使いますし、家族の場合より形式的なルールで関係性をコントロールしようとするでしょう。家族と一緒に住んでいる方が、ずっとインフォーマルで気軽な仕方で一緒に暮らすことが一般的と思われます。ところが、これはASDの人よりも定型の人に顕著と思われる特徴にすぎません。ASDの人が家族との間に設定することを望む関係は(多くの場合)、ちょうど定型の人がルームメイトとの間に設定することを望む関係と同じくらいの距離感、形式性を持っています。

 

そうだとすると、ASDの人と定型の人との間で生じる摩擦の一つのパターンが推測できます。それは、定型の人がASDの人との間で(ルームメイトとの関係とは違った)家族間のあり方を実践しようとすると、ASDが家族との間で取り結びたいと思っている関係性と異なってきてしまう、ということです。もしそのような事情があれば、定型の人とASDの人との間で始終摩擦が起きても不思議ではありません。逆にそうだとすると、定型がASDとの間でルームメイト間にふさわしいと思われる態度をとることで、摩擦は減少すると思われます。そしてこれが実際に多くのケースで観察されることなのです。一度ルームメイトだと思って接してみると、ASDの人に対する定型の人の行動が相手方に不満を持たせにくくなることが実感できます。

 

もしかすると、定型の人にとってこのような摩擦の回避は、家族を他人のように扱っていて冷たいと思われるかもしれません。定型の人にとってはルームメイトと家族のメンバーの間にある差異が大事なことである場合もあります。確かにルームメイトだと思って接することは、定型にとって重大な喪失に思われることもあるでしょう。しかしそれで摩擦が減るのであれば摩擦を減らすことを優先させたいという方もいらっしゃると思います。またルームメイトとして暮らすことはASDである相手方が望んでいる(可能性が高い)接し方でもあります。だから相手方にとっては冷たい態度であると感じられる恐れは比較的少ないと言えます。もし家庭内でASDの人との摩擦に悩んでいる定型の人の方がいらっしゃれば、ぜひ相手との関係性をルームメイトとの間の関係性と同じくらいの距離に置いてみてください。きっと摩擦が減って生活が楽になるはずです。一度トライされることを強くお勧め致します。

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