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ひきこもりオンラインハンドブック
不登校とひきこもりの共通点と違い 集団生活能力とコミュニケーション能力を区別する

「集団生活が苦手」と
「コミュニケーションが苦手」は
区別する必要があります

不登校とひきこもりは連続的な問題であると一般的に位置付けられています。しかし両者がどのような点で連続的であるのかということはあまり明らかではありません。もちろん不登校になった人がそのままひきこもりになったというケースはありますが、不登校を経験していないひきこもりの方もいらっしゃいます。だから外見的な類似性のほかに、具体的にどのような点で両者が連続しているのかということは、不明確です。

 

あらためて不登校とひきこもりの類似性、連続性について考察しようとすると、顕著なのは両方が集団生活の回避とかかわっているという点です。つまり学校に行くということは集団的な生活様式への参加ですし、日本での多くの雇用形態は集団的な行動への参加を要求しています。そうすると、例えば集団での活動が苦手であるという特徴を持った人が不登校やひきこもりの状態になる、という大雑把な説明が成り立ちます。

 

しかしこのような総括には一つの難点があります。それは不登校だけを経験する方が現にいらしゃっるという事実です。もし集団行動が苦手なために不登校になったのであれば、(雇用関係の方がもう少し選択の余地があるとしても)社会との関係でも他人との関係性を回避する傾向性はそのままであると思われます。では、不登校とひきこもりのどちらか一方だけを経験する方がいらっしゃるのはなぜでしょうか?

 

一つの可能な説明として、次のようなものが考えられます。不登校の生徒達の中には、集団生活が苦手であるというタイプの方だけでなく、コミュニケーション能力が高くないというタイプの方も含まれている。集団生活が苦手なタイプの人は成長するにつれて集団的でない形の対人関係を築いていくが、コミュニケーションが苦手なタイプの人は対人関係での困難が相対的に解消されにくい。だから、一部の不登校経験者はひきこもり、他の不登校経験者はひきこもらないということにもなります。この説明が前提としているのは、集団生活の得手不得手とコミュニケーションの得手不得手は、多少関係しているとしても別のことであるということです。

 

もしこの二つの得意不得意が区別されるならば、不登校経験のないひきこもりがいることも説明できます。ある種の集団生活には、コミュニケーションが必要ないからです。例えば軍隊はあまり相互のコミュニケーションを必要としない集団生活です。学校においても、他の生徒とコミュニケーションを取らずに生活していくことができれば、コミュニケーション能力の高低にかかわらず、不登校にならないとも考えられます。そしてコミュニケーションが不要なタイプの集団生活を送ることができる状況は、大人になると比較的稀になってしまうために、ひきこもりという状態に落ち込んでしまうということです。

 

集団における適応能力と純粋なコミュニケーション能力を区別するためには、もっと多くの考察が必要です。しかしこの能力を区別していくことで、不登校やひきこもりの事象の細部にもっと光を当てることができるかもしれません。不登校とひきこもりという事象を安易に一括することなく分析することが求められていると言えるでしょう。そうしたきめ細かな分析の手法のために、前述の区別は一助となるはずです。

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