C&C ひきこもりオンラインハンドブック
ASDのこだわりの強さを局所的整合性の観点から理解する

自閉スペクトラム症の人（以下ではASD）の特徴の一つに、こだわりが強いということが挙げられます。ここで言うこだわりとは、定型発達の人（以下では定型）が通常気にしないような事柄について強く執着するという有り様を指しています。このようなASDの特徴は、実は整合性という観点から理解することが可能です。

ASDと定型とでは、整合性を優先的に求める範囲の広狭にずれがあります。ASDは比較的狭い範囲の整合性を問題にするのに対し、定型は比較的広い範囲の整合性を問題にします。広狭それぞれの整合性を確保することは、ある程度まで互いに非両立的であると思われます。つまり狭い範囲の整合性を優先すれば広い範囲の整合性が劣後され、広い範囲の整合性を優先すれば狭い範囲の整合性が劣後される関係にあります。

このような両者の整合性の違いが、ASDと定型との間のミスコミュニケーションを引き起こします。例えばASDは定型が論理的な不整合性を放置しがちであることに耐えられませんし、定型はASDが全体として言行不一致になっているように感じることが多いです。これらの違和感は、優先されるべき整合性の範囲が自分と相手で異なることによって発生していると考えられます。

ASDのこだわりという特徴も、定型から見てASDが狭い範囲の整合性の一例として位置付けられます。逆に、定型から見て優先されるべき整合性の水準でASDが整合的でないと評価されるために、奇妙なところにこだわっているという印象がますます強くなるということもありそうです。

いずれにせよ、定型がASDのこだわりを整合性の範囲の狭さであると、より中立的に捉えていくことは、問題解決に大きく役立ちます。定型の側での整合性追求とASDの側での整合性追求は、整合性を追求するという点で同じ性質の事柄であり、そうであれば定型がASDに対して一方的に責め立てるのは必ずしも公平でない側面もあるからです。その上で、定型が広い範囲の整合性だけでなく、狭い範囲の整合性も身につけることによって、ASDと定型との間のミスコミュニケーションを避けていくことが可能になります。

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