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自閉スペクトラム症の人(以下ではASD)は、定型発達の人(以下では定型)に比べて、責任に関するコミュニケーションを苦手としており、その苦手さの核心は、責任の分配と再分配にあります。この記事では、責任に関してASDが苦手としているポイントを正確に特定したいと思います。
人と人が共同作業する際に、両者(三人以上でも同じ)の間で役割を分担することがあります。このような役割を果たしていなかった場合、役割を割り当てられていた人は後で責任を問われえます。だから役割は責任を意味しているのであって、役割のことを責任と呼ぶこともあります。ASDが苦手としているのは、このような「役割=責任」に関係しています。もっとも、ASDが苦手としているのは、「役割=責任」を担うことそれ自体ではありません。
ASDが苦手としているのは、「役割=責任」を分配することと、再分配することです。多くの共同作業では、共通の課題が与えられているが、その課題に関して誰が何をすべきかが予め決まっていないという状況がありえます。そういった場合には、最初に「役割=責任」を各メンバーに割り当てるという作業が必要になります。これが「役割=責任」の分配であり、ASDが苦手としているのは、まずはこの分配作業なのです。問題となっているケースは複数人の共同作業であり、「役割=責任」の分配は全員に共通の事柄であるので、グループの誰か一人が行えば良いと言えるでしょう。そのような一人は、普通の言葉では、グループのリーダーと呼ばれます。リーダー以外の人は、「役割=責任」の分配を行う必要がありません。だから、ASDはリーダーがいるような状況では、定型に比べて特に責任に関して問題を引き起こすことはありません。ASDは責任を分配するという意味でのリーダーシップに向いていないというに過ぎません。逆に当事者の数が少なく、特に一対一である場合に、ASDがリーダーシップを発揮できないことが、相手との関係で問題を引き起こすことがあります(相手がASDにリーダーシップを期待している場合)。
ASDは「役割=責任」の分配を苦手としているので、「役割=責任」の再分配も当然苦手としています。共同作業ではしばしば、作業の進行過程で「役割=責任」の再分配が必要になる場合があります。このような再分配もリーダーが行うということは多い一方、各メンバーに能動的な再分配が要求されることもあります(例えば切羽詰まったら他のメンバーに助けを求めるという仕方での能動的な再分配など)。このような再分配をASDが苦手とすることが、ASDと定型との共同作業を不安定化させます。というのも、「役割=責任」の再分配についておよそ能動性を発揮しない完全な受動性は、リーダー以外のメンバーに対して定型によって予期されていないからです。
再分配が苦手であるというASDの特徴は、責任に関してASDの信頼性を逆に向上させるということもあります。定型が「役割=責任」を上手く果たさなくなる理由の一つは、自分自身で勝手に「役割=責任」を再分配してしまう、つまり「役割=責任」を放棄してしまうことにあります。ASDは定型に比べるとこのような放棄を能動的に引き起こすことは少ないので、「役割=責任」を果たさなくなる原因が定型よりも少ないという側面もあることになります。ただし、「役割=責任」の再分配ができないと、「役割=責任」の分配が現実に合致しておらず、結果として共同作業が失敗するために、「役割=責任」を放棄しているようにASDが見えてしまいこともあります(それは実質的に再分配自体をASDの「役割=責任」に含ませてしまっているということです)。
以上の理由により、定型がASDと共同作業を行う場合は、終始自らが「役割=責任」の分配を行うということを覚悟しておかなければいけません。特に注意すべきなのは、上で述べた通り、再分配についても完全に自らが引き受ける覚悟をしていないといけないということです。これはASDとの関係では定型が常にリーダーシップを引き受け続けなければならないということを意味しています。ほとんどの定型は他の定型との間でそのようなスタンスに普段から立っている訳ではないと思われるため、意識的な引き受けを習得する必要性があると言えるでしょう。
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「自閉スペクトラム症の人は共感が苦手だ」と紹介されることがよくあります。しかし自閉スペクトラム症の共感能力というポイントについては、普通思われているよりも注意深く理解する必要があります。
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