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テレビを見ていると政治家などの著名人が「ノーコメント」という対応をしているのを眼にすることがあります。「ノーコメント」というコメントは、実際に何かをコメントしている訳ですから、ある種の自家撞着を含んでいるように見えますし、本当にコメントすることが無ければ「ノーコメント」と言う必要もないので、結構奇妙な表現であると言えます。実は「ノーコメント」という応答はひきこもり問題においても有効な場合があるので、この応答の本質を考察しつつ、解説していきたいと思います。
まず、コメントしないにもかかわらず「ノーコメント」と応答するのは矛盾していないか考えてみましょう。恐らくこのように応答する理由は、相手を無視していると受け取られることを避けることにあると思われます。相手の質問を完全に無視してしまうと、相手に対して失礼ですし、倫理的にも問題があると思われます。実質的に回答していないとしても、少なくとも回答しようとした、ないし相手の質問を受け止めてはいるということを表現するために、あえて応答するということは非常に合理的です。この趣旨で「ノーコメント」というコメントは我々の言語習慣の中で重要な役割を果たしています。
他方で「ノーコメント」という応答の必要性についても考えてみましょう。そもそも「ノーコメント」と言う必要があるのは、相手に実質的な中身のある応答することによって、何らかの問題が引き起こされてしまう場合です。質問と応答が事柄についての客観的な描写に関わっている場合であっても同じであるということに注意が必要です。政治家が言葉を選んで応答するのは、客観的な事柄に関する質問があり、それに対して客観的に答えていたとしても、その応答を一つのアクションとして(聴衆またはメディアまたは国民に)捉えられることを避けられないからです。何ら責任あるアクションを取りたくない場合は、一見して客観的な事柄についてのコメントであっても、用心して避けるということは理にかなっています。
ひきこもり問題においても、これらの考慮要素が妥当する場合があります。ひきこもり本人の発言に対して、それを無視して応答するということは(少なくともほとんどの状況で)不適切な対応であると言えます。他方で、相手の主張に対して、仮に客観的には適切と評価できる範囲でコメントしたとしても、コメント自体を避けた方が無難である場合があります。それは政治家の場合と同じように、客観的な事実について述べているつもりであっても、そのコメント自体を一つのアクションとして相手方から捉えられることを避けられないことがあるからです。
ひきこもり問題の解決には、ひきこもり本人が主観的に問題であると思っていること全てを、あるいはそれだけを、解決する必要がある訳ではありません。ひきこもり本人が主観的に問題だと思っていても、ひきこもり問題それ自体の解決には関係がないという場合があります。そういった場合には本人の主張や質問に対して「それについてはノーコメントである」という趣旨の応答をすることは、ひきこもり家族において合理的な対応の一種であると考えます。
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