C&C ひきこもりオンラインハンドブック
ひきこもり本人の自己決定の尊重が問題解決の王道である

ひきこもり問題の解決には王道があります。それは本人の自己決定を尊重するということです。もちろん多くのひきこもりご家族はひきこもり本人の自由や生き方を尊重したいと考えておられる一方、そのように本人に告げるだけではなぜか問題が解決しない状況に置かれています。そういった状況を踏まえると、自己決定を尊重するということがどのように問題解決に結び付くのかということがご理解いただけないかもしれません。この記事では自己決定を尊重することがなぜ問題解決に結び付くのかということを解説します。

そもそも自己決定を尊重するとは、単に本人の自由な決定を妨害しないということに止まりません。むしろそのような自由な決定がより実効的になるように適切な環境を作り出すということを意味しています。ひきこもり問題で大事なのは、本人が自己決定しやすい環境を整えるということです。というのも、ひきこもり問題では、ひきこもり本人が自己の置かれている状況を客観視できなくなっており、結果として適切な自己決定ができなくなっているという現実があるからです。

そのような自己決定を困難にする事情を明晰に認識しそれをご家族に説明するのが専門家の役割です。特に障害がひきこもり現象の背後にある場合は、発達障害であるとの医師による診断を受けることが、本人の自己決定の前提になっていることが多く見られます。ですが典型的な行き詰まりポイントがここにあります。本人が病院の受診の必要性を家族と共有せず、家族が本人を病院に連れて行くことができないということです。

こういった場合にご家族も相談機関も打つ手なしということになりがちです。しかし自己決定の尊重ということが念頭にあれば、次にやるべきことが分かります。それは病院で受診することの（ご家族の考える）必要性を本人に説明するということです。大抵の場合、ご本人にきちんと説明できていないという事実があります。それはなぜでしょうか。ご家族が説明と説得を混同されがちであることが問題です。説得しようとすると、説得には限界があるので、上手くいかないとご家族が思い込んでしまうことがあります。しかし説得する必要はありません。本人が自己決定することが実質的に可能になるためには受診が必要であることを明らかにし、ご本人が置かれている客観的状況（の問題性）をご本人に警告すればよいのです。これが自己決定を尊重するということです。

本人に対してきちんと事情を説明している状況であれば、たとえご家族が考えるベストな道をご本人が選ばなかったとしても、それを尊重する他ありません。本人の代わりにご家族が決定できてしまうと考えると、つまり本人の自己決定を尊重しないと、家族の考えるベストな道をご本人が選ばないことを問題視してしまって、ひきこもり問題が解決しません。自己決定を尊重することがこの脈絡を逆転させ、問題を解決へと導きます。

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